「迎える空間、その想い」では、企業や施設が人を迎える空間に込めた想いを、Bamboo SALAがどのように装花として表現しているのか、代表・湯澤悦子の視点でご紹介します。
#1~#4では、東京・表参道に日本第一号店を開業した「Atelier Kogao Tokyo」での空間装花を例に、お話します。
目次
#4「静と動の余白」は、どのようにつくられるのか。
空間全体を、一つの体験として考える
Bamboo SALAでは、接客のための空間全体をキャンバスと捉え、異なる大きさの装花を複数箇所に置き、来訪者に届ける印象を考えて、装花のデザインをしています。
扉を開けた瞬間に目に入る花。
奥へと進みたくなる導線を誘う花。
歓迎されていると伝わる花。
施術前のひとときに心を落ち着かせ、視線を向ける花。
一人になった洗面室で、心が動く花。
それぞれの花が異なる役割を持ちながら、一連を通して世界観をつくります。
静けさのなかに、躍動感を
Atelier Kogao Tokyoの準備中に訪問した際、既にやさしい木目と白を基調とした、知的で清潔感のある整った印象が備わっていると感じました。
一方で、完成の一手となるアクセントは、まだ手つかずで残されているようにも思いました。この白と木目の空間に、ほんの少しでも、遊び心も加えた要素を上品に添え、またそれを定期的に変化させられたなら、大曽根氏の目指す「五感に良い刺激」の実現に繋がると感じました。
デザインにおいては、Bamboo SALAの目指す「静と動の余白を愉しむラグジュアリー」を、意識しました。
それは、西洋の構造美に、日本の引き算の美学を重ねた、Bamboo SALAの独自スタイル。
フラワー装飾の基礎概念に基づく端正な形と、空間にふさわしい節度。そうした、安心感に繋がる秩序が「静」ならば、
植物の線を大胆に伸ばし、ときには一輪をあえて突出させる。定型からわずかに踏み出す挑戦と躍動感が「動」といったように。
また、花と花の間に意図して隙間をつくったり、風で揺れるような「余白」が、「静」と「動」の両者を一つの表現として調和させると考えます。
その三つが揃うことで、安心感がありながらも面白く、奇抜ではないのに個性も感じ、目を引きながらもずっと眺めていられるような花が生まれると考えています。
大曽根氏は、完成した装花を次のように表現してくださいました。
「まるで最初からそこにあったかのような、自然な馴染み方をしています。派手すぎず、かといって物足りなくもない、絶妙な存在感です。お客様がふと視線をやったときに、ほっと心が緩むような佇まいになっていると感じています」
アーティフィシャルだからこそ必要な、見えない技術
アーティフィシャルフラワーでこの表現を実現するには、生花で培った技術に加えて、素材特有の工夫が必要です。アーティフィシャルを、単に生花の「代わり」として用いるだけでは、このような表現にはなりません。
そもそもフラワー装飾は、生花であっても、植物の自然な姿をそのまま見せるだけのものではありません。
例えば、花で唯一の国家資格である「一級フラワー装飾技能士」の実技試験では、一本のカーネーションの茎に太いワイヤーを二本沿わせ、巻き付ける工程があります。生花の茎を補強し、定められた高さ、横幅、奥行き、角度、湾曲の度合いに合わせて、設計図どおりの立体的な構造物をつくるためです。
アーティフィシャルフラワーの茎には、あらかじめワイヤーが入っています。私は、生花による立体的な構造物をつくってきた経験を生かしながら、アーティフィシャルフラワーの精巧な形状や質感そのものにも魅力を感じ、積極的に用いています。
空間になじませる、現場での仕上げ
もう一つ、大曽根氏の言葉「まるで最初からそこにあったように、なじむ佇まい」の実現には、定期装花契約による現場設置であることが大きいと言えます。
Bamboo SALAの定期装花は、宅配便でのお届けや買取の花とは異なり、花の交換時に、私が現地で手を加える方法です。生花の場合にはこの現地作業を「活け込み」と呼んだりします。
アーティフィシャルフラワーの素材の品質が高いだけでは、「動」や「余白」が表現しづらいというのが、私の見解です。「静」に基づく「動」と、固定しない「余白」を加えて初めて、風や空調で揺れるような、そして見る角度によって印象が変わるような、そんな装花が完成するのです。
いわゆる商品としてのアレンジメントフラワーは、生花、アーティフィシャル、プリザーブドいずれの場合にも、宅配便に耐えられること、花の知識が無くとも(正面がわかりやすく)簡単に飾れること、形が変わらない(手直しを必要としない)ことが求められます。
「花が存在する」だけではなく、「まるで、最初からそこにあったように、空間になじむ佇まい」の実現には、現場で手を加えることが必要であり、このサービスのことをBamboo SALAでは「空間装花」と位置づけています。
一人になる場所にも小さな発見を
ところで洗面室は、お客様が一人になる場所です。「こんなところにまで」と思ってもらえるような小さな驚きを提供したい。


大曽根氏はこの洗面室の花を大変気に入ってくださり、「これなら飛行機の荷物に入るから、シンガポールの店舗にも飾りたい」と、装花の交換のタイミングで一つを持ち帰られました。
現地に飾ったその日の朝、最初にご覧になったお客様から「可愛い!」という歓声が上がったそうです。
一つの小さな花が、海を渡って人の心を少し動かす。その知らせが、今度は私を喜ばせる。花から生まれる、この小さな喜びの連鎖が、私がこの仕事を続けている理由の一つです。
再訪者にも、新しい発見を
Bamboo SALAの定期装花では、花だけでなく、花器も含めて毎回交換しています。
単に美しい状態を維持する仕組みではなく、再び訪れるお客様に新しい発見を届け、空間が丁寧に手をかけられていることを伝える、継続的な印象づくりです。
大曽根氏は、これからの装花への期待を、次のように話します。
「春の柔らかな芽吹きから、夏の涼やかさ、秋の実りの豊かさ、冬の凛とした静けさまで。それぞれの季節の空気感を、お客様の五感にそっと届けてくれるような装花を、これからもBamboo SALAと一緒につくっていけたらうれしいです」
サロンのお客様からは、
「入った瞬間に花が目に入り、心が躍る」
「花を見ているだけでリラックスできる」
という声が寄せられているそうです。
装花の写真を撮り、SNSに投稿される方もいらっしゃるとのこと。
質感や色合いを見て「本物みたいですね」と驚かれ、装花がお客様との会話のきっかけになることもあるといいます。
企業が大切にする人への想いとBamboo SALAの美意識が出会うことで、「静と動の余白を愉しむラグジュアリー」は、その場所だけの表現になります。
お客様に長く愛され続ける場所でありますよう、Bamboo SALAは今後も空間装花で寄り添って参ります。
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大曽根 貴子 氏
Atelier Kogao 代表。Honest Capital合同会社 代表社員。シンガポール勅許会計士、日英バイリンガル税理士。KPMG、有限責任監査法人トーマツでの勤務後、2012年にシンガポ―ルに移住し、日系企業のシンガポール進出をサポートするブティック会計事務所Advance Business Support Pte Ltdを設立、2016年にライフスタイルビジネスを運営するThe Conscious Lifestyle Pte Ltdを設立し、アパレル、美容室、エステサロン等をシンガポール国内で展開している。
Atelier Kogao Tokyo 【アトリエ小顔】
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3-2-19 メゼリテ表参道305
https://www.atelierkogao.co.jp/

この記事を書いた人

Etsuko Yuzawa
株式会社バンブーサラ代表/フラワーデザイナー。一級フラワー装飾技能士(国家資格)。「静と動の余白を愉しむラグジュアリー」をコンセプトに、企業や施設の空間装花を手がける。
